名古屋市の認知症、動脈硬化、自律神経失調症、その他脳、神経に関する専門的クリニック
認知症、特にアルツハイマー病では、脳神経細胞が通常より速い速度で減少していきます。従って、認知症が進行して残された神経細胞がわずかになってしまったら、どんな治療や訓練をしても、あまり効果は得られません。認知症は早期発見が大切なのです。
早期の認知症とはどのような状態を言うのでしょう? 早期とは、日常生活は何も問題なく、社会生活に支障が出てきた段階を指します。物忘れの自覚があるうちは大した認知症ではありません。早期の認知症では、そろそろ物忘れの自覚がなくなり始めます。物忘れに関して、自分だけが困る物忘れは正常ですが、周囲に迷惑をかける物忘れは認知症といえます。物忘れの自覚がないため、周りに迷惑をかける、すなわち社会生活に支障が出てくるというわけです。
ところが最近では、さらに早期である認知症の前駆段階を問題にすることが多くなってきています。この段階を軽度認知障害(MCI)と言いますが、治療効果が最も高い時期であることは言うまでもありません。MCIでは日常生活ばかりか社会生活にも支障はなく、逆に物忘れを心配するだけの認知機能が残されています。要するに、周囲に全く迷惑をかけない物忘れなのです。物忘れ(記憶障害)が通常より少し進行しており、注意力、集中力、実行力が少し低下しているだけなのです。
"物忘れを心配する人に認知症は存在しないので、安心してよい"、"多少の物忘れは生きていく上で必要"と患者さんに話してきました。しかし、物忘れにMCIが案外多く含まれている可能性は否定できません。高齢者の1/3がMCIであるとのことですから。そしてMCIの半分は3~4年で本当の認知症へ進行して行くというデータも発表されています。私も、スタンスを少し変えて、もう少し厳しく物忘れの評価をしたいと思っています。しかし脳のCTやMRIではMCIの発見は無理です。MCIを発見するためには、少々苦痛ですが、認知機能検査を受けてもらうことが大切です。早期発見し、治療や訓練をすれば認知症に進まずに済むのですから。