名古屋市の認知症、動脈硬化、自律神経失調症、その他脳、神経に関する専門的クリニック

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有酸素運動で仕上げること

"" 高齢者にとって適切な運動は有酸素運動、すなわち散歩です。激しい運動は、心肺機能の低下や転倒の危険があるため、そもそも無理です。それこそ"年寄りの冷や水"になってしまうのです。"冷や水"と言えば、活性酸素の増加という医学的危険性も挙げられます。高齢者では、急激に体内で酸素を消費すると、活性酸素が生じてしまいます。活性酸素は体内のサビのような物質で、動脈硬化、癌などの原因になります。活性酸素はまさに"年寄りの冷や水"になるのです。従って、高齢者はゆっくり酸素を消費していく散歩のような運動が無難です。

 運動が危険、あるいは面倒だからと言って、散歩をしないのは「最も危険」です。散歩の効用は、心臓の働きを助ける、脳血流を増やす、右脳を鍛える、内臓脂肪(メタボリック症候群)を減らす、骨を強くする、免疫力を増す(風邪、肺炎、癌を減らす)など数多くありますので、歩かないのはこれらの効用を失うことにつながります。散歩をしない人に、心臓病、脳梗塞、認知症、内臓肥満、骨粗しょう症、癌などの頻度が高いことは統計的に明らかになっているのです。長い目で見ると、歩く危険より、歩かない危険の方がずっと大きいのです。

 筋力は一年で1%以上ずつ低下して行きます。鍛えなければ、80歳前に若い頃の半分の筋力になってしまいます。個人差が激しいのは上半身より下半身で、ヘタをすれば歩く筋力を失う場合も出てきます。散歩せず、上に述べた病気にかかるのも困りますが、歩けなくなり座りきり老人になるのはもっと困ります。鍛錬により筋力低下は一年で0.5%以下に抑えることが出来ます。この差は大きいと思います。

 堅苦しい話はこれ位にして、歩くことを楽しむのが何よりだと考えます。都会なら色々な店を見て歩く、郊外なら四季の気配を感じながら歩く、といった余裕が必要です。歩くことを義務、苦しみと考えないようにしたいものです。胸を張って、太ももを挙げて、かかとから着地し、つま先で地面を蹴って歩きましょう。下を見ずに前を向いて景色を楽しみましょう。

 私なりの「体」の鍛え方は、「歩行を円滑に行う体作り」であり、『筋硬縮を和らげる→下半身の太い筋を強化する→歩くことを楽しむ』の順に進めるべきと考えます。"心技体"と言われますが、私としては"体心技"の順に大切と思います。 

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