令和3〜5年の間に、渡辺クリニックに起立性調節障害(OD)による不登校の患者さんが121例受診されました。その集計結果から、今後の課題を考えてみました。
OD患者さんの内訳は、13〜15歳(中学生)に最も多く、男性54人/女性67人と女性がやや多いという結果でした。不登校のきっかけ(対人関係、コロナ、受験など)は「なし」という人が半数以上でした。現状評価は「生活が乱れている」72人(60%)、「運動不足、筋肉が少ない」63人(52%)が問題点として挙げられました。生活リズムを整えて、筋肉を増やすことが大切ということになります。
自律神経失調症の面からみると、起立で血圧が下がる例(OH)が35人、起立で異常に心拍が増える例(POTS)が35人で、原因になる交感神経過敏が64人と半数以上に認められました。交感神経を鎮めるには夜型生活を改めることで、夜のスマホはやはり止めるべきです。また重症例と考えられる副交感神経低下も26人に認められました。1〜2ヶ月間の休学も仕方ないかもしれません。
私のクリニックではOD患者さんに、HOP(生活リズムを整える)→STEP(筋トレに慣れる)→JUMP(もっとしっかり筋トレ、野外活動)という順にMISSIONを出すのですが、それぞれの関門を6割くらいしか達成できず、JUMPまで合格したのは全体の2割でした。JUMPまで合格した患者さんがODを克服していくのですが、8割が脱落するという厳しい結果が出ています。
ODは心身の成長過程の不具合で生じるので、上のようなMISSIONをこなしているうちに勝手に治っていく(成長していく)というのが私の考えです。しかしその前にかなり大きな壁がそびえているわけです。私たちも、もう少し脱落者が減るようMISSIONを考え直しているところです。
今は挫折していますが、子供たちには大きな未来が待っています。こんなことで洋々たる未来を閉ざしてはいけません。石にかじりついてでも壁を乗り越えてもらいたいものです。「越えて行けそこを、越えて行けそれを、今はまだ人生を語らず」、吉田拓郎の歌の歌詞です。昭和フォークソングは子供達には懐メロ過ぎたかな?
10代の10人に1人が起立性調節障害を発症していると言われています。
『子どもが起きない!』では、3ステップで治す起立性調節障害など、治療法とODの実情をマンガとイラストを交えてわかりやすく紹介しています。
>購入はこちらから