名古屋市の認知症、動脈硬化、自律神経失調症、その他脳、神経に関する専門的クリニック

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味噌汁は日本の宝

先日、ある週刊誌から“味噌汁の医学的有用性”というテーマでインタビューを受けました。前に「健康寿命をのばす! 医者が教える味噌汁&食事術」という本を書いた関係で取材されたのです(医学理論を述べただけで、レシピは雑誌社が揃えてくれたのですが…)。
改めて味噌汁を勉強してみると、“食べなきゃ損”という気になってきます。私流に味噌汁の効用、注意点を述べていきます。

味噌汁は植物性タンパク質が豊富な大豆と麹、塩を合わせて発酵させた食品です。大豆の他に様々な栄養分も含まれます。これらが重なって、どの年代においても我々の健康を守ってくれるのです。

中年期はメタボ(内臓脂肪)を予防することが肝心ですが、そのために筋肉を増やし脂肪を燃やす努力が必要です。脂肪をあまり含まず筋肉の元になる大豆の植物性タンパク質がこの時期には有用です。具材として内臓脂肪を減らす魚(マグロ、サバなど)、食物繊維(キャベツ、ごぼう、ワカメなど)を入れると、さらに効果が上がるでしょう。

老年期のストレスは活性酸素を増やして色々な成人病を近づけますが、大豆のビタミンE、イソフラボンなどには抗酸化作用があり、活性酸素を退治します。また味噌は発酵食品なので、活性酸素などの毒を体外に吐き出す作用があります。具材として、抗酸化食品(カボチャ、大根など)、発酵食品(納豆、チーズなど)をさらに重ねるのも良いし、自律神経を整えるビタミンB(豚肉、卵、シジミなど)も有効です。

老後になりフレイルが近づくと、色々な臓器やホルモンが壊れて減っていきます。これらの原料の多くがタンパク質なので、どんどん味噌汁で補充しましょう。大豆にはトリプトファン、レシチン、チロシン、グルタミンといったこの時期に欠乏しそうなホルモンも含まれるので、心身の虚弱化を予防するのに適します。具材は何でもOK、豪華な物をたっぷり入れましょう。

  • トリプトファン

    セロトニンの元になり情緒を安定させるアミノ酸。

  • レシチン

    コレステロールを下げる、アセチルコリンの元になり記憶力を増す。

  • チロシン

    ドパミンの元になり意欲を向上させるアミノ酸。

  • グルタミン

    筋肉、胃粘膜の合成に働き、筋力、消化吸収力、免疫力を高めるアミノ酸。

味噌汁 ボクにはいっぱい武器がある!

私の専門領域である認知症予防にも味噌汁はぴったりです。神経細胞を壊すストレスに味噌汁は有効であることは上に述べた通りです。また認知症で不足する神経ホルモン(セロトニン、アセチルコリン、ドパミンなど)の補充もできます。具材に神経細胞を柔軟にするDHA(青魚)、ビタミンBくらいを加えると、鬼に金棒です。

以上のように味噌汁は動脈硬化や認知症予防にとても有難いのです。それに加えて腸内環境を整える働きにも注目すべきです。大豆の食物繊維、乳酸菌、オリゴ糖が腸内環境を整え、免疫力を上げます。腸内環境を整えることはガンや感染症を予防します。そればかりか動脈硬化、認知症の予防にもつながると今では考えられています。

どうですか? 味噌汁を毎日味わってみたいという気になりませんか? 味噌汁という万能の栄養源の上に、無限に近い具材を乗せられるわけですから、毎日でも飽きないはずです。私としては、医者をやるより味噌汁屋をやりたいくらいです。

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