名古屋市の認知症、動脈硬化、自律神経失調症、その他脳、神経に関する専門的クリニック

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血の巡り、脳の巡り

 脳はとても大食らいの臓器です。他の臓器の数倍のエネルギーと酸素を必要とします。しかも脳は栄養素の中でも糖質しかエネルギーに出来ず、大食らいのうえに偏食であると言えます。そのような脳のために、血液がどんどん流れ込まねばならず、血流が低下すると脳は仕事をしなくなるのです。この状態を、「血の巡りが悪い」と言うことが出来ます。

 脳への血液は、頚動脈と椎骨動脈の二つから流れます。これらの動脈は左右一対ありますから、合計4本の動脈で脳の栄養が賄われるのです。脳のうちでも、大脳の大半は頚動脈により栄養されます。老化とともに頚動脈の血流は低下していき、大脳の機能も低下します。「血の巡りが悪い」状態で、あまり低下すると大脳が栄養失調になり、認知症に近い状態に陥ります。脳の中でも特に大脳は大食らいですから、栄養失調に弱いのです。

 脳への動脈は心臓から流れてきており、その下には足があります。脳への血流を増やすためには、歩いて足の血流を増やし、その血流が心臓を介して脳へ届くように励むことが大切です。大脳への「血の巡り」は頚動脈エコーである程度測定出来ます。「血の巡り」の悪い患者には、もっと歩いてもらうようハッパをかけるようにしています。

 脳血流が良くても、脳そのものの機能が低下している状態を、「脳の巡りが悪い」と言えるでしょう。脳は神経細胞の集まりで、各神経細胞はシナプスにより連絡し合っています。情報はシナプスを介して神経細胞間を巡るわけで、「脳の巡りが悪い」というのはシナプスの発達が悪いことを意味します。シナプスを増やすには積極的に知識を得るよう努力することが必要です。認知症では神経細胞の減少も確かですが、それ以上にシナプスの減少が発症の大きな要因になります。忘れることは仕方ないとして、その分をまた頭に入れるよう努めることがシナプスの増加につながるのだと思います。

 「血の巡り」と「脳の巡り」のどちらが先に起こるのかは、各々によって異なるのでしょうが、認知症の場合は一般に先ず「脳の巡り」が悪くなるのだと考えられます。認知症の患者の頚動脈血流は必ずしも低下しているとは限りません。言い換えれば、頚動脈血流が良いうちは「血の巡り」が良いわけで、努力により認知機能は維持出来るのです。認知症で「血の巡り」の低下した患者は、"脳がもう栄養を必要としていない"ところまで「脳の巡り」が悪くなった段階に達したわけですから、ちょっと手遅れと考えてよいでしょう。また認知症の患者に対して動脈硬化の管理が大切なのは、「血の巡り」を少しでも保たせる目的であるとも言えます。

 「血の巡り」には歩くこと、「脳の巡り」には歩行を含めた日々の努力が必要です。

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