名古屋市の認知症、動脈硬化、自律神経失調症、その他脳、神経に関する専門的クリニック
胸痛あるいは背部痛を訴える患者はすこぶる大勢みえます。医者としては危険な疾患から順番に治療する必要がありますから、まず狭心症を考えねばなりません。狭心症の痛みは、胸(背中)が焼けるように痛いというのが典型的です。痛みのある最中なら、心電図で異常が検出できます。狭心症と紛らわしいのが逆流性食道炎で、胸やけを呈します。胃カメラで食道のただれが見つかれば、逆流性食道炎と診断出来ます。その他は、胸部の筋肉痛や神経痛によるものがほとんどで、放置しておいても構いません。
ところが稀に恐ろしい疾患も潜んでいることを頭の隅に置いておかねばなりません。それが胸部大動脈瘤破裂です。心臓から全身に血液が送られますが、心臓から出た直後の太い動脈を胸部大動脈と言います。これが動脈硬化で徐々に拡張していき、瘤になり、その瘤の直径が6cm位まで膨らむと、風船が割れるように破裂してしまいます。その際、強烈な胸痛(背部痛)が生じるのです。破裂してしまうと、救命率は極めて低く、破裂する前に発見し治療せねばなりません。胸部レントゲンで発見可能ですので、特に高血圧の方は調べておくと良いでしょう。破裂する前に手術すれば、命の危険はそれほど高くありません。
同様に腹痛あるいは腰痛の中に、腹部大動脈瘤破裂も含まれます。胃潰瘍、大腸炎、胆石、腎結石、腰椎症などの疾患に紛れて、腹部大動脈瘤の存在も忘れてはいけません。腹部大動脈も加齢とともに徐々に拡張していくのですが、動脈硬化の強い人はその拡張速度が速いのです。腹部超音波やCT検査で腹部大動脈径を測定できます。瘤になり、その直径5cm位で破裂するとされています。腹部大動脈瘤の方を一年毎に観察すると、一年で2~3mmずつ拡大していきます。血圧を下げる等して、出来るだけ瘤の拡張を防ぐ努力をしますが、危険領域に達すると、外科的に手術適応があるか外科と相談することになります。破裂すれば、救命はきわめて困難です。
脳動脈や心臓の冠動脈といった細い動脈は、動脈硬化により狭くなっていき、ついには閉塞して梗塞を起こします。一方、胸部や腹部の大動脈は動脈硬化により狭くなるのではなく、拡張していき動脈瘤になり、ついには破裂してしまうのです。いずれも閉塞あるいは破裂するまでは無症状であることが多いことを肝に銘じねばなりません。
病 名 | 痛みの種類 | 動脈硬化 | 検 査 | |
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胸 痛 | 狭心症 | 焼ける様な胸痛 | 狭くなる梗塞 | 心電図 |
胸 痛 | 胸部大動脈瘤破裂 | 強烈な胸背部痛 | 拡張する破裂 | 胸のレントゲン |
腹 痛 | 腹部大動脈瘤破裂 | 腰痛も有る | 拡張する破裂 | 超音波、CT |