目尻の上側に黄色く盛り上がった沈着物のある人がいますが、これを黄色腫と言います。何を意味するのでしょう?
黄色腫は医学的には高コレステロール血症を意味します。
食物から吸収された脂肪は、大きく分けるとコレステロールと中性脂肪があります。肝臓へ運ばれた脂肪はコレステロールと中性脂肪に"仕分け"され、体内の各部分に配られます。
コレステロールは体の組織やホルモンの成分に、中性脂肪は運動のエネルギーになります。両方とも生命活動に有用なのですが、余るとコレステロールや中性脂肪は体内のどこかに沈着することになります。
コレステロールはどこに沈着するか?その代表が動脈なのです。動脈の内面にコレステロールが沈着した状態を粥状動脈硬化と言います。黄色っぽいお粥のようなドロドロした脂肪が血管壁にこびりつき、管理が悪いと大きくなってしまい動脈の内腔を塞いでしまいます。
黄色腫とは、動脈にこびりつくのと同じ様なコレステロールが顔面に沈着した状態で、黄色腫が見られるということは、その人の動脈にもコレステロールが沈着していると考えてよいのです。勿論、血管内の血液中にもコレステロール(特に悪玉コレステロール)が多いことが予想されます。
一方、中性脂肪が余ると、脂肪組織に蓄えられるのですが、人により皮下脂肪に多く蓄えられたり、内臓脂肪に多く蓄えられたり、体質で異なります。後者の方が、人体に悪影響を及ぼすと言われています。内臓脂肪の脂肪は、先々動脈硬化につながると考えられているからです。中性脂肪は他に肝臓にも溜まり、この状態を脂肪肝と言います。超音波で観察すると、脂肪肝の肝臓は白くなっており、いかにも脂肪が溜まっているように見えます。脂肪肝も肝硬変の原因になると言われ、内臓脂肪と合わせて、これらの脂肪が多い状態をメタボリック症候群と呼びます。
黄色腫の見られる患者は私の外来でも数多く受診されています。その中には、外見を気にして、「このシミを取りたい」と話す患者もいます。しかし医者が注目するのは、もちろん外見ではなく動脈硬化なのです。黄色腫が拡大していくのは、動脈硬化が進行していくことを意味していると考えて、生活スタイルの改善に留意することが第一です。