肥満を内科的にみる場合、まず肥満が内臓や運動器に悪影響を与えているかどうかを考えます。
内臓では、やはり心臓への負担を第一に考えねばなりません。心臓は全身に血液を送るポンプなので、肥満のため"送り先"が多ければ、それだけ負担がかかるのは当然です。運動器では、膝関節に最も体重の影響が現れます。体重のほとんどが膝にかかる訳で、管理が悪いと変形性膝関節症に進展していきます。こうなると運動が制限され、肥満に拍車がかかることになります。変形性膝関節症は女性に多く、膝関節のクッションになる軟骨が老化と体重増加によりすり減っていくのです。一端減ったら、そう簡単には軟骨は増えません。
肥満の診療で次に考えることは、肥満が内臓脂肪型か皮下脂肪型か、という点です。内臓脂肪型肥満の方がメタボリック症候群を起こしやすいのです。現在、心臓に問題がなく、高血圧・糖尿病・高脂血症などのメタボの症状が現れていなくても、内臓脂肪型の肥満ではそれらがでてくる可能性が高いのです。内臓脂肪型の肥満では急いで、皮下脂肪型の肥満ではゆっくり、肥満を治していきましょう。食事を節制して、運動もそこそこ行っているのに、肥満の人が多くみられます。そのような場合、もう2,3000歩多めに歩くようにすれば半年くらい後から徐々に体重は減っていくものです。しかしそれが無理なら食事を制限するしかありません。「これ以上食事を減らすのは無理」と言う人は以下の点を考慮して下さい。
自律神経は、昼間は交感神経優位、夜間は副交感神経優位に機能します。交感神経は身体が活動する時働く神経ですから、交感神経の強い昼間は結構食べても活動のためにエネルギーは消費される方向に使われます。一方、副交感神経は休息時に働く神経で、休んでいる時に副交感神経はエネルギーを蓄えておくよう消化器に指令するのです。従って、副交感神経の強い夜間に摂った食事のエネルギーは吸収、蓄積されやすく、肥満に直結します。同じ総量のカロリーを摂るにしても、夕(夜)食をいつもの半分にし、その分を朝か昼に回すとやせられるのです。
楽しみにしている夕食を半分に減らすのは辛いでしょう。しかし、その半分を上質なご馳走にして我慢してください。御馳走とはおかずのことで、蛋白質と脂質が主成分です。ご飯や麺といった糖質(炭水化物)は控えて、朝と昼に回しましょう。日本人はお米を食べねばならない民族だと思います。しかし、食べる時間帯に注意する必要はあると思います。薬でやせようなどとは夢にも思わないで下さい。