名古屋市の認知症、動脈硬化、自律神経失調症、その他脳、神経に関する専門的クリニック

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当院の腹部エコーで調べること

 腹部エコーは体に無害の超音波をあて、肝臓、胆のう、胆管、膵臓、脾臓、腎臓などの臓器を観察します。癌、胆石、胆のうポリープ、腎結石、肝臓や腎臓の嚢胞(水溜り)などを探します。それ以外に、動脈硬化を専門に調べる当クリニックでは、以下の点に重点を置き検査します。

 メタボリック症候群(以下メタボ)が話題になっていますが、医学の世界でも内臓脂肪の病的意義が注目されてきています。メタボは、内臓脂肪が増加して肥満になり高血圧、糖尿病、高脂血症などの成人病を起こす病態を指します。単なる肥満は、厳密にはメタボとは言わないのです。吸収した栄養が余ると、体内において脂肪として蓄えられていきます。主にお腹の周辺に蓄えられるのですが、そこからが個々で異なります。皮下脂肪として蓄えられるタイプと、内臓脂肪として蓄えられるタイプに分かれるのです。前者は直接内臓には影響を与えず、むしろ内臓を保護する役割も果たします。皮下脂肪は、お腹をつまむと触れる脂肪で、これが多すぎて肥満になるだけなら、メタボとは言えないのです。

 しかし皮下脂肪の下に内臓脂肪があり、これはお腹からつまめません。内臓脂肪型の肥満がメタボになるのです。大体、体型から、リンゴ型の肥満は内臓脂肪が多いと考えられ、メタボが予想されます。一方、お尻の大きな洋ナシ型の肥満は皮下脂肪が多いとされます。内臓脂肪は"弾薬庫"のようなもので、色々と体に悪いホルモンを分泌します。血圧を上げたり、コレステロールを増やしたり、血糖値を上げたり、癌をも増やす物質が分泌されるのです。従って、我々は腹部エコーで、正確に内臓脂肪を測定するようにしています。
 腹壁にエコーをあてて調べると、まず表面に皮下脂肪の層が現れ、その下に内臓脂肪の層が現れます。各層の厚さを測定するのですが、皮下脂肪が10mm、内臓脂肪が5mm位が理想です。逆の数値が得られた場合が問題で、「内臓脂肪型の脂肪蓄積体質」と考えられ、上の理論から言うと成人病が起きやすく、極端に言えば、"早死しやすい"体質だと考えられます。どんなに太っていても内臓脂肪が少なければ、今のところ急いでやせる必要はありません(皮下脂肪が20mmもあるのに、内臓脂肪は5mmしかない方も実際にみえます)。内臓脂肪型の人は散歩などの有酸素運動を即刻始めるべきです。

 もう一つ、当クリニックでは腹部エコーで腹部大動脈の太さを測定しています。腹部や胸部の大動脈は動脈硬化の進行により拡張していきます。一般に腹部大動脈の直径は20mm以内なのですが、一部コブのように膨れている大動脈瘤が発見される場合もあります。50mm以上になると、風船が破裂するように破れてしまい死に直結します。従って、腹部大動脈の動脈硬化の程度や動脈瘤の有無も見落としてはいけません。当クリニックでは、癌の発見より、以上のようなポイントで腹部エコーを行っています。

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