名古屋市の認知症、動脈硬化、自律神経失調症、その他脳、神経に関する専門的クリニック

47

超高齢社会では「体」「心」「技」

 高齢者(65歳以上)が全人口の21%以上を占める国家を超高齢社会と言い、世界中で我が国のみが超高齢社会なのです。それはそれで誇らしいことなのですが、高齢者が気をつけねばならない第一は、体(足)を鍛えることであると思います。

 昔は「心」「技」「体」の順に鍛えることが大切と言われてきました。医学的に解釈すれば、「病は気からであり、次に衣食住が足りていれば生き延びられ、そこで初めて体を鍛える努力をする」ということだったと思われます。しかし現代では、生活環境および医学が長足の進歩をしたため、「人生五十年」の昔と異なり、平均寿命80歳以上の時代を迎えました。現代においても「心」「技」「体」で良いのでしょうか? 私は違うと思います。

 現代において、大抵の人は生きていくための衣食住が欠乏することはないでしょう。こうなると「技」というのは、生活習慣病などの予防や病に罹患した場合の治療を指します。高齢者は、そこまで生きられたのですから、このような「技」は後回しで良いでしょう。

 確かに高齢者にとって「心」、すなわち気力、向上心は大切だと思います。我が国では認知症が急増してきており、これは超高齢社会まで達した賜物とも言えますが、それだけに年を取れば取るほど「心」の充実が望まれます。前向きな気持ちを持たねばなりません。また現代はストレス社会でもあり、自律神経失調症も発症しやすくなります。その面からも「心」の整備は必要になります。ストレスに負けないような生活スタイルを送る工夫も大切です。

 しかし現代では、何と言っても「体」に一番留意すべきではないかと思います。それは、我々が気力だけではカバー出来ないほど高齢まで長生き出来る時代に突入してしまったからです。70歳くらいで死ぬのなら、別にそれほど体の鍛錬は意識しなくてもいいでしょう。しかし80歳ともなると、いくら頭が元気でも、体を鍛える努力を怠れば、生活は困難になります。足が弱って外出もままならないようになってしまったら、生きている意味が薄れてしまいます。「心」のところで述べた認知症自律神経失調症の予防にも、歩くこと(特に散歩)は欠かせぬ養生法だと思います。

 そのような訳で、超高齢社会である現代では、「体」「心」「技」の順に養生する必要があると考えます。「年を取れば取るほど体を鍛えることを第一に優先しそれにより気力充実やストレス解消が達成され、心の整備につながる。そして得られた心身の健康を維持するため、若干の医療技術を取り入れる」スタンスで、90歳、100歳を目指しましょう。

関連する今月の話題