名古屋市の認知症、動脈硬化、自律神経失調症、その他脳、神経に関する専門的クリニック

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認知症の進行予防

認知症(特にアルツハイマー病)に対する対応には、

  • 1)早期発見・早期治療

  • 2)進行し自分一人では生活出来なくなった患者の介護

  • 3)もっと進行し合併症(肺炎、歩行障害、摂食障害など)が出現した場合の治療

の三つがあると思います。そのうちで、医療者は1)および3)を担当する訳で、最も手のかかる2)は福祉の方が介護保険を用いて行うことになります。極端な言い方をすると、医療者は認知症の最初と最後を診ることになるのです。

 認知症の場合、病気が進行すればするほど手間がかかり、出来れば進行を防ぐのが望ましいのは確かです。我々はその努力をしていますが、治療薬を適切な時期に(進行してしまう前に)投与することが大切です。しかし治療薬と言っても、厳密には「治療」ではなく「進行予防」のための薬なのです。認知症を完治させる薬は今のところ開発されておらず、2~3年進行を遅らせるのが精一杯といえます。

 私個人の見解では、認知症の進行予防のため、治療薬の果たす役割は3割程度で、残る7割は訓練と思っています。治そうという前向きな気持ちがなければ、薬は全く効かないと言ってもよいでしょう。進行予防の訓練が大切なのです。

 進行予防の訓練として、様々な方法が薦められています。その内容はここでは述べませんが、訓練の場所として自宅以外では、デイサービスが挙げられます。"勉強嫌いの子供には塾"という感覚です。しかし現状のデイサービスの大半は、自分一人での生活が困難な人の介護の爲の"預かり所"というのが目的です。確かに、デイサービスがこの役割を果たすのは重要なことですが、上に述べた理由で、進行を出来るだけ抑えることで、認知症に費やされる経済的および人的負担はかなり削減できると思います。

 認知症患者が介護保険のサービスを受けるためには、医療機関を受診して「主治医意見書」を書いてもらう必要があります。デイサービスで介護を受けるためにも受診せねばなりません。私は出来るだけ早く介護保険を早く取らせるようにしていますが、そこで引っかかるのは、早期発見した認知症患者に介護保険を取らせる意義です。早期なので介護される必要はなく、独り暮しならヘルパーさんを付けることくらいしか現状では介護サービスがありません。そこで進行予防のデイサービスの必要性が出てくるのです。そのような『訓練型デイサービス』がこれからどんどん出来てくることを期待します。 

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