神経内科を受診される患者さんの中で、最も多い訴えの一つがフラツキです。原因はいろいろとありますが耳から来るもの、脳から来るもの、その他(筋肉、脊髄、末梢神経など)、の3つに大きく分けられます。去年の12月の話題では脳から来るフラツキを取り上げましたが、今月は耳から来るフラツキを説明したいと思います。
耳と言ってもフラツキを起こすのは、内耳という部位です。外耳と中耳の間に鼓膜がありますが、内耳はさらにその奥に位置します。内耳は聴覚と平衡感覚を調節しますが、平衡感覚の部分を三半規管と言います。フラツキはこの三半規管がおかしくなると起こるのです。体をクルクル回転させると、目が回りますが、三半規管からのフラツキはこのような回転性のめまいが典型的です。「天井が回る」ようなめまいが引き起こされます。一般に寝返りを打った時、振り返った時など、頭の位置を急に動かした時に起こります。このような動きに慣れていない人に起こる傾向があり、すなわち運動不足の人に起こりやすい傾向があります。
三半規管が障害される代表的な疾患として、良性頭位性眩暈があります。その他にメニエル氏病や突発性難聴もありますが、これらは平衡感覚だけでなく聴覚も障害されます。聴覚まで障害されると、難聴のため生活に支障が生じます。従って、めまいのうちに治療、予防しておく必要があります。ここまで来ると耳鼻科の出番になります。また平衡感覚だけでは、いかに耳鼻科といえども正確に診断出来ない場合もあります。耳がボーンと詰まった感じがする、聴こえにくい、耳鳴りがするなど聴力に関係した症状があれば、少しでも早く耳鼻科にかかるべきですが、それらがなければ放っておいても問題ないのが普通です。めまいは2~3日で治りますので、じっと我慢しましょう。
良性頭位性眩暈はかなりの人が一生に一度は経験する疾患ですが、原因ははっきりしません。おそらく内耳の中のほこり(耳石と言います)が動いて、三半規管のめまいを起こす部位にひっかかるのが、原因ではないかと考えられています。患者さんは頭を動かさぬよう歩きます。頭を動かすとめまいが起こるかも知れないので、恐れているのでしょう。しかしそれは逆で、頭をよく動かすことにより、耳石が一所に引っかからないようにすべきです。また良性頭性眩暈の患者さんは肩こり、不眠も多いようです。大した病気ではないので、恐れず運動しましょう。