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高齢者が一人で暮らすには何が必要か?

 先月の話題では老後に家で暮らすことについて述べましたが、今月はその為には何が必要かということについて記してみました。

 まず挙げられるのが、高齢になっても独居(または2人)していけるような住宅設計や改修の積極的推進です。最近の高齢者は老後、独居を選ばざるを得なくなる確率が増していく訳ですから、それに早くから備えなければなりません。住宅の改修も早目に行うべきです。高齢者の転倒、骨折は家の外より内の方が多いと言われます。骨折して寝たきりになってからでは手遅れです。座りきりに近い状態でも、何とか暮らせるような住宅設計を考えるべきです。やや地味で画一的になっても仕方ないですから、高齢者対応住宅という概念の普及が望まれます。

 次に介護保険の拡大も必要と思います。これからの老人は多種多様で、わがままになるでしょうから、これまでの介護保険のような堅いしばりは取り除いて、かなり自由度の高い介護制度にするべきではないでしょうか。昔の家政婦さんのような存在も必要になって来るでしょう。現在のような保険制度に縛られたヘルパーではなく、もっと柔軟な支援体制が必要と思います。老人が病気で入院するのに、家族がいつもそばに付き添うわけにはいかない世の中です。私も自分の母の緊急入院に立ち会いましたが、手続きなどで夜中までかかってしまい、とても疲れたことを覚えています。家族がそばにいない場合、これを患者自身が行うとするなら、とても対応出来ないでしょう。家族はどんな犠牲を払っても、何とか親の入院生活を援護しなければならないというのが建前ですが、物理的に困難な環境の家族も増えていくでしょう。病気になる前からの専属のヘルパーが、入院後も話し相手も兼ねて付き添い、色々と雑用もこなしてもらえば安心なのです。勿論、その費用をすべて介護保険で賄うことは無理ですので、足らない分は自己負担にするのです。24時間常に付き添うのではなく、一日のうち何時間と契約するのです。オプションのたくさん付いた柔軟な介護保険制度が近い将来望まれます。

 子供と別居して暮らしていく可能性のある方の場合、まずは老後に備えた自宅の改修と介護保険内外の介護サービスを積極的に考えることをお勧めします。もう少し先でも構わないだろうとタカをくくっていると、手遅れになってしまうこともあります。老後の準備は案外手間がかかるものです。

① バリアフリー(段差をなくす) 
② てすりの設置(転倒予防)
③ 車いす移動が楽にできる空間を(トイレ、お風呂、廊下など)
④ 防火、防犯対策(火事、空き巣、不審者の侵入などに備える)

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