戦後、生活スタイルの欧米化で最も増加したのが脂肪の摂取量と車の台数と言われています。これらに呼応するように、糖尿病が増えてきているのです。すなわち脂っこい食べ物と運動不足が糖尿病の引き金だと考えられます。
戦前と比べて、摂取カロリーは変わってはいません。食べ物の質の変化が日本人を糖尿病にしているのです。肉は50年前の約10倍、乳製品は20倍に増加したと言われます。脂肪の取りすぎが糖尿病の原因なのです。確かに糖類も増えてきていますが、糖類を含む炭水化物は戦前と変わっていません(糖類以外の炭水化物である米やイモ類が減っているから)。カロリーの面からみても、炭水化物1gあたり4Kcalであるのに対して、脂肪は9Kcalもあるのです。糖尿病になってしまえば、糖質の制限は必要ですが、糖尿病の予防のためには、むしろ脂肪の制限が優先されます。
食べ物に含まれる糖は膵臓から分泌されたインスリンがエネルギーに換え、余った糖はグリコーゲンとして肝臓や筋肉に蓄えておくのが正常の代謝です。ところが糖尿病とは、インスリンがしっかり働かないため、糖がエネルギーに換えられず、余った糖が血液中を過剰に流れることにより起こる疾患です。その結果、動脈硬化があちこちで起こり、臓器の機能が低下してしまうのです。インスリンがしっかり働けば、どんなに糖類を食べてもエネルギーに換わるか、余ってもグリコーゲンとして蓄え、次の運動に備えます。
しかしインスリンがさぼるようになってくると、上に述べたような迅速なエネルギー代謝が行われなくなります。そしてインスリンにさぼり癖をつけるのが脂肪なのです。脂肪の過剰摂取によりメタボリック症候群、すなわち内臓脂肪が増加すると、内臓脂肪からインスリンの機能を低下させる物質が分泌されると言われています。ゴミ(糖)を整理する掃除人(インスリン)がのそのそとしか働かないなら、ちょっとしたゴミでも散らかってしまう(血中に残ってしまう)のです。
日本人のインスリン分泌は、欧米人に比べると1/2だそうです。インスリンがテキパキ働かなければ、すぐにゴミが散らかってしまいます。インスリンを元気にする第一は運動することですから、欧米人並みの運動量ではすぐにインスリン不足に陥ってしまいます。欧米人の半分しか脂肪を取らないか、2倍歩かなければ、我が国の糖尿病はこれからもどんどん増え続けるでしょう。
タンパク質は肉体の維持のため必要なので、糖尿病が心配な方は低脂肪高蛋白な食品を心がけるべきです。大豆製品、モモ肉、ヒレ肉、白身魚、えび、たこ、貝類がおすすめです。