500メートル位歩くと、ふくらはぎが痛くなりびっこをひくようになる患者がいます。しばらく立ち止まり休むと、再び歩けるようになるものの、また一定の距離を歩くと痛くて歩けなくなるのです。これを「間欠性は行」と言います。その原因には、腰椎症と下肢の動脈硬化の2つがあります。
腰椎から、お尻や足に神経が降りていき、下半身の運動や感覚を司ります。腰椎が変形することにより、それらの神経が圧迫され、歩行時に疼痛を起こし、間欠性は行になります。脊椎狭窄症や椎間板ヘルニアが腰椎変形の原因にあるのですが、立って歩くことにより、重力で腰椎同士の間隔が狭くなり、神経が圧迫されるのです。多くの場合、圧迫される神経は坐骨神経で、「坐骨神経痛」という病名になります。坐骨神経はお尻から太ももの後ろ、ふくらはぎ、そして足の裏まで分布しますから、場合により痛くて歩けなくなり、びっこをひくようになります。これらの疾患は整形外科で治療してもらいますが、重度の場合は手術も仕方ありません。日頃の生活としては、座る姿勢に気をつける(上手に座れないなら立つか寝る)、腰椎を支える筋肉(背筋や腹筋)を鍛えるなどのリハビリに励むことです。
もう一つの原因である下肢の動脈硬化は、進行すると壊疽を起こすことになり、腰椎症より注意する必要があります。足先に血が行き渡らなくなり、ついには足が腐ってしまうこともあるのです。下肢の動脈硬化が強い患者は、全身の動脈硬化も強いので、脳梗塞、心筋梗塞、腎不全などを合併している場合もあります。逆に、脳梗塞などを起こした患者には、足の動脈硬化がないかどうかチェックしておく必要もあります。私のクリニックでは、動脈硬化の強い患者には定期的に下肢の超音波検査を行っていますが、大腿動脈が50%以上狭窄し始めてきたら血管を拡張する薬を始めます。それまでは血圧、糖尿病、コレステロールなどの管理で進行を防ぎます。どんどん歩いてもらうことは言うまでもありません。禁煙も口を酸っぱく注意するのですが、なかなか言うことを聞かない患者も多いようです。50%狭窄くらいでは足は痛くなりませんので、現状が理解出来ないのでしょうか。
80%以上狭窄してきて始めて痛みを覚え始めます。血管拡張薬でも痛みが増すなら、いよいよ手術ということになります。手術といっても足を切断するのではなく、狭窄した動脈を拡げる手術です。カテーテルで比較的簡単に治せる場合もあります。
私のクリニックでは、壊疽で足を切断した患者は一人もいません。ご心配なく。