起立性調節障害の子供は共通した風貌、雰囲気を持っていると感じます。「か弱い子供」という感じなのですが、それはどこから来るのでしょう? 一口で言うと、彼らの体質なのでしょうが、だから仕方ないという訳にはいきません。
起立性調節障害の子供には下のような特徴があるようです。
起立性調節障害の身体的、生活習慣的特徴
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- 1)運動不足
- 2)足がむくむ、だるい、冷える
- 3)太れない、太るのがイヤ
- 4)偏食・菜食 ・小食
- 5)寝る前にスマホをやってしまう
- 6)ゲームをやり始めたら止まらない
- 7)夜はついつい目が冴えてしまう
- 8)ちょっとしたことでイライラ、カッカする
- 9)やる気が起こらない
- 10)日課が作れない
- 11)よく泣く
大人も子供も起立性調節障害時代
このような特徴は最近の子供によくみられますが、起立性調節障害はその傾向が強いように思います。少なくともこれらの生活習慣が起立性調節障害を悪化させる可能性は大きいといえます。これらの特徴があるなら、時間をかけて生活改善に励むべきです。
起立性調節障害について述べてきましたが、子供だけでなく大人にも起立性調節障害が増えてきている実感があります。ストレスの多様化、運動不足、時間や情報に追われる現代社会が起立性調節障害を引き起こしているのかも知れません。
不登校のため受診する児童が増えてきている一方、会社に行けなかったり仕事中(通勤中)に不調になって起立性調節障害が見つかる患者さんもかなり受診されます。起立性調節障害という診断はそもそも思春期の子供に対して付けられた病名なので、厳密には当てはまりませんが、症状は本来の起立性調節障害とほとんど合致します。従って、その対応も同様であるべきと思います。運動、栄養、生活パターン(夜型、スマホ、ゲーム)の改善などを地道に続けることが必要です。
どうも起立性調節障害は年齢層が広がってきているのではないかと思うのですが、これらの患者さんは、社会において"瀬戸際"に立たされていることも事実です。学校に行けないなら勉強が遅れるし、会社に行けないなら下手をするとクビになってしまいます。どうすれば良いのでしょう?
残念ながら起立性調節障害には決定的な治療法はなく、先に述べた生活習慣の改善を地道に行うしかないと思います。ここで私が患者さんや家族に伝えたいことは「2倍の努力」ということです。患者さんが社会(学校)復帰するには、普通の人の2倍以上の努力、ガッツが必要なのです。またそれを見守る家族や会社の人も2倍の忍耐がいると思います。「もっと頑張れ!」と励ますことは簡単ですが、それを抑える忍耐というか暖かい眼差しも必要な場合もあると思います。なかなか難しいスタンスなのですが。
超高齢社会の現状をよくみてみると、これを支えるべき若者が起立性調節障害で社会から脱落することは一人たりとも困ります。彼らが復活できるよう応援したいものです。それともう一つ、高齢者の中にも起立性調節障害のような症状を呈する患者さんが増えてきているのも確かです。高齢者には動脈硬化、心臓病などの成人病への対応も加わりますが、先に述べた生活習慣の改善は高齢者にとっても有用な「養生法」であるということを付け加えて、起立性調節障害の話を終わりたいと思います。