私は動脈硬化が標準より進んでいる患者さんに対して、動脈硬化危険因子(高血圧、糖尿病、高脂血症、肥満、喫煙など)の治療、節制を指導します。その上で以下の3つの養生を勧めます。
一つ目は歩くことです。歩くことにより、筋肉の毛細血管が増えます。毛細血管が多いほど心臓の負担は減り、高血圧が改善されます。歩くことで交感神経が落ち着くこと、塩分(ナトリウム)が尿からたくさんだ出せることも血圧低下につながります。また運動により血液中の糖分が筋肉へ流れ込む結果、糖尿病が改善されます。もう一つ、歩くことは最も手軽な有酸素運動で、ゆっくり脂肪を燃やすことができます。高脂血症も改善できます。
二つ目は青魚を食べることです。青魚の油はEPAと呼ばれ、血管を柔らかくします。細胞膜は脂肪で作られますが、同じ脂肪でも獣油は固まり易い性質を持ちます。牛肉の脂はすぐに固まってしまいます。一方、魚油は固まりにくいのです。寒流魚は氷点下45度の海の中を泳いでいても血液が固まりません。同じ脂肪でも魚の油が細胞膜のためには良いのです。一日にイワシ6匹食べると良いそうです。がんばって食べましょう。魚油は固まらない代わりに腐り易い(酸化し易い)性質を持ちます。酸化予防のためにビタミンEも一緒に摂りましょう。
三つ目は野菜、海草を目一杯食べることです。現代人、特に日本人はビタミン、ミネラルおよび食物繊維が不足していますが、野菜、海草にはこれらがたくさん含まれています。一方で現代人は昔と比較にならない位に脂肪と糖分を摂り過ぎています。栄養過多です。摂りすぎた脂肪、糖分を代謝するのにビタミンやミネラルが必要なのです。代謝とは栄養をエネルギーに換える働きです。代謝出来なければ、余って体内に内臓脂肪、動脈硬化として蓄積されることになります。食物繊維はとり過ぎて代謝もされない脂肪、糖分を体外に運び出す働きをします。一日に両手3杯分の野菜、海草を食べましょう。