4月から我々のクリニックに名古屋大学神経内科 名誉教授の古池保雄先生が加わることになりました。名古屋大学の神経内科では伝統的に自律神経の研究が盛んなのですが、古池先生はその中核を担ってこられました。
古池先生のお仕事を簡単に紹介します。起立により血圧が著明に低下する人がいます。これを起立性低血圧と言いますが、これによって立ちくらみが起こります。患者によってはメマイ、フラツキと訴える場合もあります。症例によっては起立性低血圧が脳梗塞に発展することもあります。どういう人が危ないかというと、動脈硬化が強い例だと思います。私もかつて、脳梗塞を発症し寝たきりになってしまった症例を何例か経験しています。また起立性低血圧の例の中にパーキンソン病や脊髄小脳変性症などの神経内科しか扱えない疾患も含まれていることもります。このように起立性低血圧の診断、治療はとても重要であり、自律神経の評価が不可欠なのですが、古池先生はこれを系統付けて解明されてきました。
起立により心拍が必要以上に増えて、その結果、朝起きられない患者も数多くみられます。これを起立性調節障害と診断します。起立性調節障害のため不登校になる可哀想な学童も少なからず受診されます。こんな時、自律神経失調が関与している場合が多く、自律神経の評価が決め手になることもあります。古池先生がこれまで明らかにされてきた自律神経の研究結果を、大いに参考にさせていただいています。
また古池先生は、食事をすると血圧が低下して倒れる食事性低血圧の自律神経異常、治療についても精通されています。このような患者さんも結構みられ、これからもっと御意見を賜りたいと思っています。
自律神経はすべての内臓を円滑に動かしている末梢神経なので、自律神経失調症は内科の領域の疾患であるといえます。認知症、動脈硬化とともに自律神経失調症を専門にしている我々にとって、心強いパートナーが加わったと喜んでいます。