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「ながら」がいけない

 老化により身体のあちこちが傷んでくるのは、ある程度仕方のないことです。しかし老化に伴って偶発する“事故”は避けねばなりません。その際に留意すべき点は、「ながら」をしないことです。

転倒 老化に伴う事故の一つとして、転倒があります。老化により下半身の筋力、柔軟性、バランスなどが低下してきますから、転び易くなるのは当然なので、高齢者は気をつけて歩かねばなりません。場合によっては、杖をつく、手すりにつかまる、などの対策を練ることも必要です。ところが、転倒して骨折をした人に尋ねると、“何かを運びながら歩いていた”、“考え事をしながら歩いていた”などの状況下で転倒事故を起こすことが多いようです。「ながら」がいけないのです。歩くのが精一杯の人は、歩くことだけに集中しましょう。大概は転ばずに過ぎていくのでしょうが、万一「ながら」中に転んでしまったとしたら、悔いが残ります。骨折により寝たきりに至る高齢者は今後どんどん増えていくでしょう。転倒は外より自宅の方が多いと言われており、玄関と風呂場が特に多いようです。気をつけて下さい。

誤嚥 もう一つ、食事中の誤嚥も老化に伴い起こりやすい事故です。誤嚥(または誤飲)とは、本来胃の中へ入って行くはずの食べ物が、間違って気管支、肺へ入ることです。食べ物と空気は、喉のところで別々の行き先をたどります。飲み込んだ食べ物は胃の方へ、空気は肺へ行かねばなりません。無意識に喉のところの神経、筋肉が交通整理をしているのです。ところが老化に伴い、この交通整理が不確実になると誤嚥という現象が起きるのです。若いうちは、テレビを観たり、しゃべりながら食べていても、滅多にむせたりはしません。しかし高齢者はむせることが多くなります。あまり「ながら」をせず、食べることに集中しましょう。

 「むせる」というのは、食べ物が肺に入ってしまったため、それを外へ出そうとする“正当防衛”です。しかし老化が進むと、この正当防衛があまり起こらなくなる場合もあります。その結果、誤嚥した食べ物は肺の中に徐々に溜まっていき、ついには肺炎を起こすことになります。これを「誤嚥性肺炎」と言います。高齢者にとって命取りになる病気です。

「ながら」がいけない

 転倒骨折、誤嚥性肺炎は「ながら」により誘発されることが多いと自覚すべきです。そんなことで命が縮まるのは良くありません。“歩く時は歩く、食べる時は食べる”ことに集中すべきです。高齢者にとって(かなり年を取ってからの話ですが)、「歩くこと、食べることは仕事である」と肝に命じて下さい。

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