「後ろ向き」の人が認知症になり易いし、認知症になった患者も「後ろ向き」だと進行していってしまいます。出来るだけ「前向き」の姿勢が大切だと思います。物忘れが気になる人は認知症と診断されることを恐れず、また認知症の可能性ありと診断された患者さんも積極的に訓練や治療に取り組むことが大切です。認知症の患者に趣味は何か?と問うと、「昔はやっていたが、最近は休んでいる」と答えることが多いようです。確かに体力、能力は落ちていくので、落ちこぼれることもあるかも知れません。しかし好きな事を喜んでやっていた頃の「前向きな」気持ちを思い出して、重いお尻を上げる気力が大切と思います。一方、その家族や介護する者の姿勢はどうあるべきなのでしょう?
患者の意思を尊重することは必要です。患者が前向きに訓練や治療に取り組もうとしているなら、それを全面的に後押しするべきです。しかしそうでない患者が多いのも事実です。認知症では判断力が鈍り、自信も喪失する場合が多いので、概して新しい事に挑戦する気持ちが減っていきます。子供に無理やり勉強させても、効果は上がらないから、もう少し成長するまで放っておくのは構わないかもしれません。しかし認知症の場合は、成長することはなく、悪化していくばかりです。患者が拒絶しても、思い切ってお尻を押してあげることも必要な場合があります。
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私は認知症の患者に対して、出来るだけ早く介護保険を取るよう勧めることにしています。急に悪化したり、家族が病気になったりした時、介護サービスをすぐに受けられるよう準備しておくのです。しかし始めは、「介護など受けたくない」と拒否する患者もたくさんみえます。せっかく介護保険を取っても、何も使わないケースも多くみられます。例えば、一日あるいは半日“デイサービス”に通って、趣味や運動を他のみんなと行うというのも一策ですが、特に男性の患者はなかなか受け入れません。
確かにデイサービスは暇つぶし的な所も多く、もっと目的意識の強い施設があれば良いとは思いますが、家で何もしていないよりはましです。そんな場合、家族が強くお尻を押すことも大事です。
患者の意思を尊重ばかりしていると、話がちっとも進まないこともあります。どうしても馴染まなければ、別の施設に変えてみればいい、という位に軽い気持ちで、とにかく参加させてみることも一策です。
強引さも時には大切です。