名古屋市の認知症、動脈硬化、自律神経失調症、その他脳、神経に関する専門的クリニック

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~認知症予防には旅行が一番~

 認知症の予防には、前頭葉を鍛えること、ストレスを避けること、右脳を使うことなどが大切だと述べてきました。私は患者に、認知症の予防法として、楽しく外を歩くこと、日記を書くこと、趣味を続けることを勧めます。歩くことは前頭葉が司る上に、楽しく外を歩けばストレス発散になります。また景色を眺め、外界の色々な音やニオイに触れることは、感性を高め、右脳を使うことになります。

 日記を毎日書くことは、面倒くさくてもやり遂げることなので、これは前頭葉を鍛えます。よく簡単な計算問題のドリルを完成させることが訓練として行われますが、計算問題は計算することより、やり遂げる達成感が大切なのです。日記もこれと同じで、毎日面倒でも続けることが第一です。日記を書くことは、左脳が主体ですが、日記の中でその日見た風景を思い出したり、その絵を描いたりすると、右脳を使うことになります。

 趣味は元々好きだったことですから、ストレス発散につながります。しかしその趣味もだんだん続けるのが億劫になっていくものです。そこを何とか続けることは、前頭葉の鍛錬になるのです。趣味も出来れば二つ持っているのが好ましく、一つは体を使う趣味(例えばゴルフ、ゲートボールなど)、もう一つは右脳を刺激する芸事(音楽、絵画、工作など)が良いでしょう。

 以上のような認知症の予防を考えていくと、もってこいの訓練法があります。それが旅行なのです。出かける時、多少面倒でも、家を出ることは前頭葉を活性化しますし、途中色々と歩かねばならないので、これも前頭葉の鍛錬になります。そして旅を終えて家に帰ったときの達成感で、前頭葉はさらに鍛えられるのです。のんびり景色を見たり、温泉に入ったり、美味しい物を食べたりすれば、おのずとストレスは発散されます。見たことのない景色や美味しい食べ物を楽しむことは、右脳の刺激にもなります。先に述べた意欲を増進させる神経伝達物質であるドーパミンの分泌も期待出来ます。旅行に行く前の「ワクワク」する気持ちがドーパミンを分泌させるからです。

 定期的な旅行は認知症を八分の一に減らすと言われます。次はどこへ旅行しようかと考え決断するだけでも、頭の活性化につながります。友達がいないので旅行に行けないと言う方もいますが、簡単な日帰りバス旅行程度なら一人でも行けます。
そうしているうちに、友達も出来るでしょう。

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